海外危機管理情報 2024年5月23日版 | JCSOS 海外留学生安全対策協議会|教職員向け

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海外危機管理情報 2024年5月23日版

海外危機管理情報

1.【世界】世界:新型コロナウイルスをめぐる状況
 このところ、新型コロナウイルスの感染例が増加しているというニュースが世界各地から入るようになってきている。
 フランス・パリでは、アメリカの人気歌手テイラー・スウィフトのコンサートが計4回、18万人を動員して行われたところ、コンサートの観客らの間で喉の痛み、咳、鼻水、発熱といった風邪やインフルエンザのような症状が出ている人が多く発生し、さらに新型コロナウイルスの検査をしたところ陽性反応が出ている人もいるとされている。検査をしていない人の中にも新型コロナウイルスにかかった人は多いのではないかと考えられている。パリではこの1か月ほど市内の公共交通機関内でマスクを着ける人が少なからずいたり、マクロン大統領の会見時に周囲にいる政府高官らがマスクを着けていたりするなど、マスク着用をしている人が目に付く現地ニュース映像などがみられている。
 パリはこの夏にオリンピックを控えているため、現地ではたとえ新型コロナウイルスが流行した場合でも当局が声高に注意や警戒を呼び掛けることはないとみられているが、市民らの中には感染の増加を受けて自主的にマスクを着けるなど警戒をする人が増えているようだ。
 スペインでも新型コロナウイルスの感染例がこの数週間で約3倍に増加していると報道されている。症状として多いのは喉の痛みだという。
 イギリスでも、今月に入り新型コロナウイルスの感染が確認された例が増加しており、当局が発表している5月20日時点での最新のデータでは直近7日間での感染数は前週より約18%増加している。
 シンガポールでは今月第2週目に25,900例以上の新型コロナウイルス感染が確認されたとして、その前の週の倍近くに増加したことを受け、新たな流行が始まったとみられるとした。これを受けて当局は手洗い・マスク着用・ワクチン接種・体調不良を感じたら休むことの4つを呼びかけている。
 アメリカでは疾病対策センター(CDC)が5月17日に、この9月からの新学期に向けた学校における新しい感染症予防ガイダンスを発表した。この中で、新型コロナウイルスだけでなくインフルエンザやノロウイルス、連鎖球菌など様々な細菌やウイルスの蔓延が原因となる感染症の予防のために、適切な手洗いと咳エチケット、換気、消毒、予防接種が重要であることを示している。また、体調不良者が出た場合にはマスク着用や学生間の距離の確保などを行うことを勧めている。
 世界保健機関(WHO)も5月19日に、新型コロナウイルスやインフルエンザ等の感染症の脅威が下がったとはいえ、呼吸器感染症の感染を予防し自分の身を守るために、混雑した屋内空間ではマスク着用を勧める呼びかけを行っている。

ワンポイント・アドバイス
 新型コロナウイルスは、消滅したのではなく、常に存在するウイルスとなっただけであり、現在も世界中で感染者は日々多数発生している。
 新型コロナウイルスに限らず、風邪、インフルエンザ、胃腸炎その他感染症は常にあり、海外滞在中は体調の維持が危機管理の基本となるので、自分でできる感染症対策は常に行うようにされたい。
 フランスの例やWHOの注意喚起でもわかるように、誰かに言われてマスクを着けないといけない、あるいは着けてはいけない、ということではなく、自分で考えてその時に必要だと思う感染症対策は行うようにされたい。


2.【アジア】シンガポール:激しい乱気流で緊急着陸、死傷者発生
 5月21日、ロンドン発シンガポール行きのシンガポール航空321便ボーイング777型機が、激しい乱気流に巻き込まれた後、タイの首都バンコクの空港に緊急着陸した。乗客乗員200名以上が乗っていたが、この乱気流で73歳のイギリス人男性1人が死亡、7人が重傷、他軽傷者も含めると約50人程の負傷者が出た模様。なお死亡した男性の死因は、当局によれば心臓発作とみられているようだ。
 タイ沖上空で乱気流に巻き込まれた同機は、約5分間で1800メートル程度急降下したとみられ、機内は飲み物のカップや皿、ペットボトル、乗客の荷物やクッションなどの物が飛び散り、シートベルトをしていなかった人は天井に頭を打ち付けるなどし、頭部から血を流すけがをした人もいた。乗客の一人のインタビューによれば、シートベルト着用サインが出たと思ったら突然機体が急降下したということだ。緊急着陸後に撮影された事故後の機内の映像からは、キャビンの天井に血の跡が残っていたり天井が損傷していたり、所々で酸素マスクが降りていたりする様子が写っており、天井等にぶつかった乗客は少なくなかったことが伺える。

ワンポイント・アドバイス
 今回の事故のような激しい乱気流に遭遇することは比較的まれとはいえ、乱気流は飛行機に乗っている間は常に遭遇する可能性がある。乱気流への乗客の備えとして基本かつ最も有効なのはシートベルトを常に着用することである。
今回の事故でも、シートベルトをしていなかった乗客の多くは身体が浮き上がり天井にぶつかるなどしたようだ。またシートベルトをしていないと、自分の身体のコントロールができなくなるため機内で散乱する物にぶつかる確率も高くなる。
 海外留学・研修を予定する学生等に対しては、飛行機の機内では、トイレに立つ等必要な時以外は常にシートベルトを着用するよう伝えられたい。また、シートベルト着用サインが出た場合には(乗員から案内がある場合が多いが)、すぐにシートベルトを着用し、トイレの使用も控えてシートベルト着用サインが消えるまで着席するようにと伝えられたい。


3.【アジア】アフガニスタン:観光客を狙った銃撃事件発生
 アフガニスタン中部のバーミヤンで5月17日、武装集団による銃撃事件が発生し、複数の報道によれば少なくとも4人が死亡、他に複数の負傷者が出た模様。
 犯人らは観光客とみられる外国人を狙ったものとみられており、少なくとも死者のうち3人はスペイン人で、負傷者にもスペイン人1人とオーストラリア人1人が含まれていたことが確認されている。
 バーミヤンにはユネスコの世界遺産である「バーミヤン遺跡」がある。

ワンポイント・アドバイス
政治的に不安定な国・地域では、時に観光客や外国人が狙われる事件が発生することがある。例えば1990年代にはエジプトで観光客・外国人を狙ったテロが増加し97年には有名観光地で日本人10人を含む62名が死亡、日本人を含む85人が負傷する無差別殺傷テロ事件が発生している。
有名な遺跡や名所があるとしても、危険な国・地域への渡航や訪問は極力控えるようにされたい。なお、我が国の外務省の安全情報では、アフガニスタンの危険レベルは全土でレベル4(退避勧告)となっている。


4.【大洋州】ニューカレドニア:暴動激化の影響
 フランス領ニューカレドニアの混乱は依然として収まっておらず、首都ヌメアでは町中いたるところで放火があったり、店舗は大小問わず略奪が横行したり、道路上には放火された車等が散乱し事実上封鎖状態となるなど、街が機能不全に陥った。この状況を受け、フランスのマクロン大統領がヌメアを訪問することとなった。
街では、治安部隊が燃やされた瓦礫や車両の排除を行うなどしているが、現在も道路が通れなくなっている箇所が複数あり、店舗への品物の搬入が滞り、市民らの日常生活に支障が出ている。空港も閉鎖されたままで、外国からの観光客らは足止め状態となっている。
 空港に足止めとなっている人はオーストラリア人とニュージーランド人が多いこともあり、両国政府は航空機を飛ばして人々の救出を行うとしている。オーストラリアの外相は、この航空機での救出は、他国からの観光客らも支援するとしている。
 フランスの報道では、混乱の状況は落ち着いてきたとしているが、住民らの中には混乱の再燃を危惧する声もきかれる。
なお、我が国の外務省でも20日付で危険レベルが引き上げられ、ニューカレドニア全土がレベル2(不要不急の渡航は止めてください。)となった。

ワンポイント・アドバイス
 ニューカレドニアは美しい南の島のリゾート観光地として宣伝されているが、南の島やリゾート地は地政学的な問題を常にはらんでいるところが多いことは認識しておくべきである。
 ニューカレドニアへの渡航を予定している関係者がいる場合には、スケジュールの延期や目的地の変更、渡航の中止等を勧められたい。もしも現在滞在中の関係者がいる場合には、現地の信頼できる最新情報を確認し、在ヌメア領事事務所からの連絡を受けることができるようにし、できるだけ早く帰国または脱出ができるよう準備しておくよう伝えられたい。


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