海外危機管理情報 2025年7月10日版
1.【米州】アメリカ:テキサス州豪雨による増水で100人以上の死者
今月4日の未明、テキサス州南部の大雨の影響で川の水位が2時間足らずで6メートルあまり上昇し、サマーキャンプに参加していた子どもたちをはじめ大勢の人たちが流され、少なくとも100人以上の死者、160人以上の安否不明者が出ているとされる。犠牲者は今後も増える可能性があるとみられている。川の周辺にはキャンプ場が複数あり、その中の女子専用のキャンプ場を多数が利用していたため、女の子たちの犠牲者が多くなった模様。
今回の災害に関しては、十分な警報システムが備わっていたのかという疑問が出されている。被災した川沿いには水位の上昇を知らせるサイレンなどが設置されていなかったという。また、夜間には複数の警報が住民らの携帯端末へ配信されたというが、電波状況や端末設定の違いで受信できないケースもあったといい、効果に疑問の声が出ているという。大きな被害を受けた街の市長は「自分には届かなかった」と語ったそうだ。
現場周辺はもともと鉄砲水が起こりやすい地形ではあるものの、ここまで急激な増水が起こるとは予想されていなかったという報道もある。
ワンポイント・アドバイス
世界的に近年の急激な気象変化が起きやすい状態は、今年も引き続いているとみられる。そのため「これまでは大丈夫だった」が通用しない事態が各地で発生していると認識するべきである。
海外留学・研修等の期間中に、自然の中でのキャンプや川沿いでのレジャーを体験する機会があるかもしれない。しかし、そのようなレジャーに参加する際には、地形を確認することと最新の気象情報を確認することは、安全のために必須である。今回被害が出た場所は低地で鉄砲水が発生しやすい地形だったとされる。そこに作られているキャンプ場は潜在的に危険が大きいと考えられる。降水確率が低くとも、雨が降る可能性があったり、突然のゲリラ豪雨予想が出たりした場合には、いつでも避難できるように準備をしておくことが命を守ることにつながる。
2.【欧州】欧州諸国:熱波による猛暑、山火事の被害拡大
世界的な猛暑は欧州も例外ではない。スペインやポルトガルで45度を超える場所も出るなど、各地で6月の最高気温が更新されるほどの猛烈な暑さが続いている欧州では、特に南欧諸国で山火事が激しさを増している。南フランスでは大規模山火事の影響で、バカンスシーズン最初の週末となった先週末、主要道路の一部が通行止めとなったため、大渋滞が発生した。ギリシャのクレタ島では山火事の延焼が続いており、住宅やホテルなどの宿泊施設にも到達し、住民や観光客らが避難する事態となっているという。
このほか、フランス・パリのエッフェル塔やギリシャ・アテネの古代遺跡アクロポリスは猛暑のために一時閉鎖するなど、猛暑や山火事の影響は拡大している。
ワンポイント・アドバイス
山火事は風の向きや強さにより、離れた地域でも煙や灰の影響を受けることがある。海外留学・研修等を予定する学生等に対しては、煙いと感じる場合にはマスクを着けるなどして体調に影響が出ないように自分で工夫すること、今年の夏も世界的に猛暑となっているので外出の際は暑さ対策を十分に実行すること、また、今後も猛暑による観光地の閉鎖や交通機関への影響もあり得るので、移動時には目的地や交通機関の最新情報を確認することを伝えられたい。
3.【アフリカ】ケニア:大規模反政府デモで死者・逮捕者多数
7月7日、ケニアの国家警察は、ケニア全土で行われた反政府デモで少なくとも民間人11人が死亡、500人以上を逮捕したと発表した。
報道によれば、今回のデモは1990年7月7日の民主化要求デモ「サバサバ」から35年の節目に合わせて呼び掛けられたもので、汚職疑惑や警察の暴力、政府批判者の拉致をめぐり怒りを抱える若者が中心となったという。警察は催涙ガスや放水車で対応したとのこと
アメリカCNNによれば、ケニアでは昨年、生活費が高騰する中で増税を盛り込んだ財政法案に反発する抗議デモが起きた。政府は法案を撤回したが、その後も警察官による拘束中に教師が死亡した事案や、丸腰の露天商が警官に射殺された事件をめぐり国民の怒りが高まっているという。先月の反政府デモでは少なくとも16人が死亡し、数百人が負傷する事態となったとされる。
在ケニア日本国大使館からも、注意喚起が出されている。
「ケニア全土における抗議行動の実施に伴う注意喚起」:https://www.ke.emb-japan.go.jp/itpr_ja/11_000001_01569.html
ワンポイント・アドバイス
海外危機管理の基本として、デモに参加しない、見物もしないということに加え、デモの際には破壊行為や暴力行為などデモとは関係のない思わぬ事態も発生しやすいため、デモが行われている、または行われる予定の地域の周辺も近づかない、通過もしない、ということが大事である。
ケニアは日本からの渡航者・在留者も少なくないが、犯罪が身近な国であることを忘れずに、安全には注意をして過ごす必要がある。
4.【米州】アメリカ:乗客のバッテリーが発火し旅客機緊急着陸
7月7日、アメリカ・ジョージア州アトランタからフロリダ州へ向かっていたデルタ航空の機内で、乗客のリチウムイオンバッテリーが発火する事故があり、同機は行先を変更して緊急着陸した。この事故による負傷者はいなかったという。
リチウムイオンバッテリーを搭載する電子機器自体は、条件はあるものの、預け荷物に入れることも機内に持ち込むことも認められている場合が多い。ただし予備のバッテリー(モバイルバッテリー)は機内持ち込み荷物に入れなければならないとされる。
今回はバッテリーの発火後、乗員はすぐに耐火バッグにバッテリーを入れ隔離できたことから、幸い、大事には至らなかったという。
ワンポイント・アドバイス
先週の本稿で、世界各地でモバイルバッテリーが原因と考えられる事案が発生していること及びわが国でのモバイルバッテリーの持ち込みルールの変更について伝えたが、早速、発火事案が報道されている。
海外留学・研修等を予定する学生等に対しては、モバイルバッテリーを持参する際は、安全基準を満たしたバッテリーを購入すること、機内持ち込みルールに合致したモバイルバッテリーかどうかを確認することを行った上で機内持ち込み荷物に入れるように伝えられたい。
また、自分とは関係なくとも、万が一、機内で煙や発火を目にした場合には、すぐに客室乗務員に伝えることも、併せて伝えられたい。
《ご注意》
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