教職員の引率、海外出張 | JCSOS 海外留学生安全対策協議会|教職員向け

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教職員の引率、海外出張

学校が企画・実施する派遣留学・海外研修プログラムは多様化しています。プログラムによっては、参加する学生への安全配慮、および安全管理を重視し、教職員による引率者を設定することもあります。ここでは、海外プログラムでの引率教職員の設定、また、教職員を海外出張に派遣する際の留意点について考えていきます。

派遣留学・海外研修プログラムにおける教職員の引率

学校の海外プログラムにおいて教職員を引率者として派遣することがあります。トラブル防止や発生時の対応といった、安全管理の観点から有効です。また、参加者や保護者への安心感にも繋がり、参加しやすい環境をつくることができます。留学先の体制や参加者の語学力・対応力を考慮して、参加者自身がトラブルの解決ができない可能性が高いと判断する場合は、学校は安全配慮義務における結果回避義務の観点から、教職員の引率を検討することになります。

引率教職員の役割と適切な任命

海外プログラムにて引率者を付ける場合、学校は引率者に期待する役割を明確にし、トラブル発生の際の行動について、あらかじめ両者で合意をしておくことが重要です。学校が引率者に期待する業務の例を以下に挙げます。

学校が引率者に対して期待する業務の例
  • 海外プログラムにおける学習指導
  • 学生に対する教育的指導や注意、警告
  • 救急・医療機関の利用手順の確認
  • 事故の兆候、学生の心身不良兆候の把握と報告
  • 緊急時の行動判断基準の明確化
  • プログラム実施校との連携と初期対応
  • 学校本部との連携

引率者の人選は、危機管理以外の項目も含めて任命基準を予め設け、その基準に準じて選任がなされていることが大切です。具体的には、語学力や健康状態、海外への渡航経験などが挙げられます。
また、引率者は、学校が期待する役割の他、参加者や保護者が期待する役割も求められます。引率者が期待される役割を遂行できず、参加者へ不利益を与えた場合には使用者責任や任命責任を問われかねません。参加者や保護者に対しても、引率者の役割を明確にしておくことが重要です。

参考  添乗員の役割と責任

海外プログラムを企画旅行で実施する場合は「添乗員」が同行することがあります。旅行会社は「企画旅行」において、旅行業法に定められる旅程管理責任を負い、添乗員は「旅行会社の企画旅行に同行して旅程管理業務を行う者」と規定されています(旅行業法第12条の11:旅程管理業務を行う者)。添乗員の最たる役割は企画旅行を円滑に実施するための「旅程管理」であり、学校は引率教職員の役割と責任との違いを認識しておくことが必要です。

事故発生!引率者の対応

事故発生時には引率者が状況をいち早く確認し対応することになります。また、トラブルの大小を問わず、引率者はさまざまな場面で対応を求められます。

事故発生時の引率者の対応ポイント
  • 事故の状況の把握
  • 学生の所在・状況の確認
  • 日本の学校への報告・相談
  • 現地受け入れ機関との連携
  • 速やかに保険会社・大使館(領事館)等へ連絡

一旦事故が発生すると引率者にはさまざまな対応が降りかかります。被害の最小化には迅速な初期対応が肝要なため、学校は以下のようなポイントで引率者をサポートする体制を事前に整えておくことが重要になります。

  1. 日本の学校における緊急連絡網と対応体制の構築
  2. 受け入れ先でのサポート体制の確認
  3. 24時間365日で対応可能な危機管理システム利用の検討

24時間365日対応の相談窓口「J-TAS」

JCSOSの危機管理システムJ-TASは、利用者からの様々な相談を24時間365日、日本語・英語で受け付け、海外経験豊富なオペレーターが対応。対応内容はその都度学校に報告されます。引率者と学校はJ-TASを通して情報を共有しながら危機に対応することができます。

教職員の海外出張

教職員の海外出張においても安全配慮義務が求められます。労働契約では明確に使用者(学校)に対して、労働者への安全配慮義務を規定しています。学校は海外出張計画書に無理がないかを確認、渡航先の安全状況の把握、事故発生時の対応体制の構築を行います。同時に出張者にたいして安全情報の入手手段や事故発生時の連絡方法について指示することも必要です。

教職員の海外出張時の確認ポイント
【学校】
・海外出張計画書に無理がないか
・渡航先の安全状況の確認
・事故発生時の対応体制の構築
・海外旅行保険の付保
【出張者】
・現地安全情報の入手
(外務省 たびレジ登録・安全の手引き)
・事故発生時の連絡先や行動の確認
・海外旅行保険の加入

【労働契約法5条本文】

使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるように、必要な配慮をするものとする。

【厚生労働省通達(平成24年8月10日)抜粋】

労働契約法第5条は、使用者は、労働契約に特段の根拠規定がなくとも、労働契約上の付随的義務として当然に安全配慮義務を負うことを規定したものであること。 「生命、身体等の安全」には、心身の健康も含まれるものであること。

教職員の海外出張に際してもJCSOSの海外危機管理システムをご利用いただけます。